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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)17290号 判決 1990年8月24日

原告(反訴被告) 苑田ミドリ

右訴訟代理人弁護士 近藤誠

同 近藤與一

同 近藤博

被告 和田一美

被告 ジャパン・セントラル・フェイムス株式会社(旧商号ジェイ・シィ・エフ・インターナショナル株式会社)

右代表者代表取締役 山口隆弘

被告(反訴原告) 株式会社エー・アンド・ジェー

右代表者代表取締役 石森菊江

右訴訟代理人弁護士 腰原誠

主文

一  被告和田一美は原告に対し、別紙物件目録記載一及び二の土地につき別紙登記目録記載一の登記の抹消登記手続をせよ。

二  被告ジャパン・セントラル・フェイムス株式会社は原告に対し、原告から金四億六一一五万五一六〇円、及びこれに対する平成二年六月一八日から支払済みに至るまでの年一二パーセントの割合により金員の支払を受けたときは、別紙物件目録記載一及び二の土地につき別紙登記目録記載二の登記、別紙物件目録記載三ないし六の不動産につき別紙登記目録記載三の登記の抹消登記手続をせよ。

三  原告(反訴被告)は被告(反訴原告)株式会社エー・アンド・ジェーに対し、金二億三三〇二万六三八六円の支払を受けるのと引換えに、別紙物件目録記載五及び六の建物から退去して同目録記載三及び四の土地を明渡し、別紙物件目録記載一及び二の土地を明渡せ。

四  原告(反訴被告)の被告ジャパン・セントラル・フェイムス株式会社に対するその余の請求、及び被告(反訴原告)株式会社エー・アンド・ジェーに対する請求をいずれも棄却する。

五  被告(反訴原告)株式会社エー・アンド・ジェーの原告(反訴被告)に対するその余の反訴請求を棄却する。

六  本訴の訴訟費用のうち被告和田一美に関する費用については被告和田一美の、被告ジャパン・セントラル・フェイムス株式会社に関する費用については被告ジャパン・セントラル・フェイムス株式会社の、被告株式会社エー・アンド・ジェーに関する費用については原告の各負担とし、反訴の訴訟費用はこれを五分しその四を原告(反訴被告)の、その余を被告(反訴原告)株式会社エー・アンド・ジェーの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  本訴請求

1  被告和田一美(以下「被告和田」という)は原告(反訴被告)(以下「原告」という)に対し、別紙物件目録記載一及び二の土地(以下「甲土地」という)につき別紙登記目録記載一の登記の抹消登記手続をせよ。

2  被告ジャパン・セントラル・フェイムス株式会社(以下「被告JCF」と略称する)は原告に対し、原告から三億三五九六万二〇〇〇円の支払を受けたときは、甲土地につき別紙登記目録記載二の登記、別紙物件目録記載三ないし六の不動産(以下「乙不動産」という)につき別紙登記目録記載三の登記の抹消登記手続をせよ。

3  被告(反訴原告)株式会社エー・アンド・ジェー(以下「被告A&J」と略称する)は原告に対し、別紙物件目録記載一ないし六の不動産(以下「本件不動産」という)について別紙登記目録記載四の登記の抹消登記手続をせよ。

二  反訴請求

1  原告は被告A&Jに対し、別紙物件目録記載五及び六の建物から退去して同目録記載三及び四の土地を明渡せ。

2  原告は被告A&Jに対し甲土地を明渡せ。

3  原告は被告A&Jに対し、昭和六三年一二月一日から本件不動産の明渡済に至るまで一ヶ月七八万円の割合による金員を支払え。

三  被告和田は公示送達による呼び出しを受けたが口頭弁論期日に出頭せず答弁書も提出しない。被告JCFと被告A&Jは、原告の請求全部の棄却を求め、原告は被告A&Jの反訴請求の全ての棄却を求めた。

第二事案の概要

一  (抹消を求める登記の存在)

本件不動産は原告の所有であるが、そのうち甲土地については、昭和六二年三月二七日売買を原因として取得者を被告和田とする同月三〇日受付の所有権移転登記(別紙登記目録記載一の登記)、及び次の取得者を被告JCFとする昭和六二年七月一一日受付の所有権移転登記(別紙登記目録記載二の登記)を経て、被告A&Jを取得者とする昭和六二年七月二七日受付の所有権移転登記(別紙登記目録記載四の登記)がなされており、乙不動産については、被告和田を取得者とする所有権移転登記はないが、やはり昭和六二年七月二日売買を原因として同月一三日受付の被告JCFを取得者とする所有権移転登記(別紙登記目録記載三の登記)を経て、被告A&Jを取得者とする別紙登記目録記載四の所有権移転登記がなされている。しかし原告は被告和田や被告JCFに対して、甲土地や乙不動産を売却した事実はない。そこで所有権に基づき被告らに対して右各所有権移転登記の抹消登記手続を求める。

二  (原告の被告JCFに対する主張)

原告は昭和六二年七月一六日、被告JCFから七億五〇〇〇万円を弁済期を同年九月一六日として借り受けたが、その債務の履行を担保するために、被告JCFに対して、本件不動産と静岡県田方郡伊豆長岡町字田端一七三番五宅地外三一の土地建物(以下伊豆長岡の不動産という)について、譲渡担保権を設定し、前項記載の所有権移転登記をなした(甲土地については、本来ならば被告和田の所有権取得登記を抹消し、原告の所有名義を回復した上で所有権移転登記をなすべきところ、中間を省略して被告和田から被告JCFに対して直接の所有権移転登記をした。)。

ところが被告JCFは右弁済期到来前に、本件不動産につき被告A&Jを取得者とする前項の所有権移転登記をしてしまったのであるが、原告は約定の弁済期日である同年九月一六日には、被告JCFに対して本件不動産と伊豆長岡の不動産の所有名義を返還してくれるのであれば、右譲渡担保権の被担保債務である右借受金七億五〇〇〇万円全額を返済する旨の口頭の提供をしたのであったが、被告JCFは八億二〇〇〇万円を支払うのでなければ本件不動産と伊豆長岡の不動産の返還には応じられないと回答したので、結局弁済は実行されなかったが、そのような事情であるから原告には債務不履行はない。

ところで被告JCFは昭和六二年一一月二四日、伊豆長岡の不動産を訴外朝日リビング株式会社に売却してしまったが、原告には債務不履行がないため被告JCFには売却権限がないのに売却をしたのであるから、これにより原告は伊豆長岡の不動産を受け戻すことができなくなってしまい、当時の右不動産の時価である四億三一〇〇万円相当の損害を被ったが、後日右訴外会社から和解金として二三〇〇万円の支払を受けたので、損害額は四億八〇〇万円に減少した。一方、原告が被告JCFから借り受けたのは七億五〇〇〇万円であるが、約定利息の利率は年一二パーセントであるから借受日から弁済期までの利息の額は一四五八万七五〇〇円のところ、これを超える二〇六二万五〇〇〇円を天引きされたので、手取り額は七億四三九六万二五〇〇円であったから、右天引き額と約定利息金額との差額六〇三万七五〇〇円は元本の返済に充当すると、原告の被告JCFに対する借受金残債務は七億四三九六万二五〇〇円となるが、これから伊豆長岡の不動産の売却による損害を差し引くと結局原告の被告JCFに対する債務の残額は三億三五九六万二〇〇〇円となる。

そこで原告は被告JCFに対し、三億三五九六万二〇〇〇円を支払ったときは、本件不動産全部についての被告JCFの所有権取得登記の抹消登記手続をなすよう求める。

三  (原告の被告A&Jに対する主張)

被告A&Jは、被告JCFを取得者とする所有権移転登記がなされたのは、本件不動産が譲渡担保に供されたがためであることを知りながら、その被担保債権の弁済期到来前に被告JCFから本件不動産を取得したものであるか、又は被告A&Jは被告JCFが金融を営むにあたっての金主的存在であったのであるし所有権取得登記当時の事情からすれば、譲渡担保であることを知ることができる状況にあったのに重大な過失により知らなかったのであるから、原告からの追求を免れることはできない。

仮に被告A&Jが本件不動産の所有権を確定的に取得し、その行使として原告に対して明渡を求めることができるとしても、原告は被告JCFに本件不動産を譲渡した原因はあくまでも譲渡担保であるから、原告は被告JCFに対して清算金の支払を求めることができ、その清算金の額は被告JCFが被告A&Jに本件不動産と伊豆長岡の不動産を譲渡した当時の両不動産の価額一二億六六〇〇万円から原告の被告JCFに対する残債務七億四三九六万二五〇〇円を差し引いた残額からさらに原告が訴外朝日リビング株式会社から受領した和解金二三〇〇万円を控除した残金四億九三〇〇万円であり、この清算金請求権は本件不動産について生じたものであるから、その支払を受けるまで原告は本件不動産の明渡を拒むことができる。

四  (被告JCFの主張)

被告JCFは原告に融資をしたことはなく、二ヶ月以内ならば買い戻しに応ずることを約束して原告から本件不動産を買い受けたのである。原告から予め買戻期限である昭和六二年九月一六日に買い戻しのために銀行振出小切手を持って行くとの連絡があり、被告JCFの本店に来たが、買戻代金たる現金はもとより銀行振出小切手も示さなかったし、被告JCFとしては真実に買戻代金が調達できるのであれば、被告A&Jに対する所有権移転登記の抹消の準備をしなければならないので、誰からどのようにして買戻代金を調達できる目処がついたのかについての質問したが、原告はそれらの質問にも答えることができなかったし、結局買い戻しを実行できずにその期限を徒過してしまったのである。

五  (被告A&Jの主張)

被告A&Jは被告JCFが原告から本件不動産と伊豆長岡の不動産を買い受けるにあたり、被告JCFに対してその買受代金等のため一〇億円を返済期日を昭和六二年一〇月一五日と定めて貸し渡し、その貸金債務の返済を確保するため、被告JCFが売買により確定的に所有権を取得した本件不動産等について譲渡担保の設定を受けたのであって、被告JCFの本件不動産についての権利が譲渡担保権であることは知らなかったし、知らないことに過失はなかった。

又原告の主張するとおり原告が被告JCFに本件不動産を譲渡した原因は譲渡担保によるものであったとしても、被告A&Jが被告JCFに金員を交付するにあたり、原告自身が被告A&Jに対して、原告が被告JCFに対する関係において二ヶ月後には無条件に本件不動産を明渡す義務を負担することを自認していたのであるから、信義則からも今更譲渡担保の拘束を受けるものであると主張することはできない。

さて被告JCFは被告A&Jに対して弁済期の後日である昭和六二年一〇月二〇日に内金二億円を返済したので、伊豆長岡の不動産は被告JCFに返還し、その後残金八億円に対する約定利息を昭和六三年一〇月一五日の分まで支払ったので、それまで弁済を猶予していたが、その後支払を怠ったので同年一一月末日、両被告は合意により本件不動産の所有権を確定的に被告A&Jに帰属させることとした。

そこで被告A&Jは原告に対して、本件不動産を明渡すよう求め、昭和六三年一二月一日から明渡済まで一ヶ月七八万円の割合による使用損害金の支払を求める。なお原告は前述のとおり被告A&Jに対して無条件明渡義務を自認したのであるから、信義則又は禁反言により留置権を主張することはできない。

第三争点に対する判断

一  被告和田に対する請求

《証拠省略》によれば、甲土地について被告和田名義にて所有権移転登記がなされたのは、一旦被告和田の所有名義とした上で訴外都市資源開発株式会社に抵当権等を設定して同訴外会社から七億二〇〇〇万円を借り受けるためであって、原告が被告和田に甲土地を譲渡したためではないものと認められる。とすると原告の被告和田に対する請求には理由がある。

二  被告JCFに対する請求

1  譲渡担保か買戻条件付売買か

本件不動産と伊豆長岡の不動産の被告JCFに対する所有権移転登記の登記原因が売買とされていること、乙一号証の一、二の契約書は土地付建物「売買」契約書となっていること、乙二号証の領収書の但書には「売買代金」と記載されていること等は、本件の取引が買戻条件付売買であると主張するのに有利な証拠であるが、《証拠省略》によれば、本件不動産の所有権移転は専ら訴外都市資源開発株式会社に対する返済金七億二〇〇〇万円を被告JCFから融資を受けるためになされたものであって、目的不動産の価額が七億二〇〇〇万円ないし七億五〇〇〇万円であったためでないことが認められ、この事実は本件不動産譲渡がその形式にもかかわらず、譲渡担保であって買戻条件付売買ではないと認定せしめる決定的な根拠である。

2  被告JCFの処分権の有無

《証拠省略》によれば、本件不動産等の登記簿上の所有名義が既に弁済期限到来前に被告A&Jに対して売買を原因として移転されていること等の事情から融資金を弁済しても本件不動産が返還されないのではないかとの危惧を抱いていたので、藤原証人と原告は訴外山田弘太郎に返済金の調達を依頼する一方弁済期到来前から被告JCFと接触を保っていたが、いよいよ弁済期限が到来した昭和六二年九月一六日に原告、藤原、山田の三名は被告JCFの本店を訪ねて担当者である取締役の久保和史と面談したところ、久保は約旨に反して七億五〇〇〇万円の支払を受けても本件不動産と伊豆長岡の不動産は返還できず八億円に近い金額の支払を受けなければその返還には応じられないと回答したものと認められる。このときもし被告JCFにおいて七億五〇〇〇万円が支払われたときには本件不動産等の返還に応ずるとの回答をしたとすれば、その日のうちに原告が同額の金員を調達して支払うことができたと認定できる充分な証拠はない。したがって昭和六二年九月一六日に原告が口頭の提供をしたと認めるには無理がある。しかし原告が債務を弁済しても被告JCFが本件不動産と伊豆長岡の不動産を返還しない意向が明らかに認められたので、原告は原告訴訟代理人に相談して本訴提起に及んだことは明らかであり、昭和六三年五月二〇日に被告JCFが受領した同日付け原告準備書面には、被告JCFが本件不動産等を返還するのであれば原告の被告JCFに対する債務を返済する意思があることが表明されている。もっとも原告は債務不履行がないと主張しているのであるから、右準備書面により支払意思があることを示したのは残元本と約定弁済期限までの約定利息だけであるが、その当時において被告JCFが意を翻して残元本と実際に弁済が実行される日までの約定利率による遅延損害金が支払われたときは、本件不動産等を返還する旨を表示したとすれば、原告がその遅延損害金の支払を拒絶したであろうとは到底認め難い。とすると被告JCFとしては一旦は債務弁済受領を拒絶する意思を表明したのであるから、あらためてそれを受領する意思を通知した後でなければ、信義則上、譲渡担保権を実行する権限、つまり担保物たる本件不動産等を処分する権限を有しないと解するのが相当である。さすれば被告JCFは未だ本件不動産処分する権限を取得していないから、原告が被告JCFに対する債務を弁済したときは、本件不動産の登記名義を原告に返還する義務があり、原告が弁済すべき債務額は金四億六一一五万五一六〇円、及びこれに対する本件口頭弁論終結日の翌日である平成二年六月一九日から支払済みまでの年一二%の割合による遅延損害金を加えた金額である(損害金の利率についての約定はないので約定利息の利率により算出すべきことになる)。この場合における原告の債務額を右のとおり算出した根拠は次のとおりである。まず約定利率とその金額、天引き額、手取り額が原告主張のとおりであることは乙二号証によって認められるが、そうすると借受金残元本は原告主張のとおり七億四三九六万二五〇〇円であるところ、まずこれに弁済期の翌日である昭和六二年九月一七日から被告JCFが訴外朝日リビング株式会社に伊豆長岡の不動産を売却してしまった日である昭和六二年一一月二四日までの約定利率である年一二パーセントの割合による遅延損害金一六六三万二一四八円を加えた七億六〇五九万四六四八円から、右売却当時の伊豆長岡の不動産の価額四億三一〇〇円を差引き、後日訴外会社から支払を受けた和解金二三〇〇万円を足した三億五二五九万四六四八円が残元本であるので、これに右残元本に対する昭和六二年一一月二五日以降本件口頭弁論終結時である平成二年六月一八日までの右の割合による遅延損害金一億八五六万五一二円を加算した結果得られた金四億六一一五万五一六〇円が原告が本件口頭弁論終結時における被告JCFに対して負担する残債務の額である。

三  被告A&Jに対する請求

1  被告A&Jは譲渡担保であることを知っていたか

被告A&Jは被告JCFが本件不動産につき譲渡担保権を有するに過ぎないことを知っていれば、本件譲渡担保権の拘束を受け原告の追求を免れることはできないが、譲渡担保であることを知らなければその知らないことについて過失の有無及びその程度を問わず原告の追求を受けることはない。被告A&Jは被告JCFの親会社ではないが、証人石森文男の証言によれば、ある時期においては被告JCFに対する融資元であったことも否定できない。また同証言によれば被告A&Jは被告JCFが原告から本件不動産等を買収する資金を融資したとのことであるが、それにしては被告A&Jが融資した昭和六二年七月一六日よりも前である同月一一日ないし一三日には被告JCFに対する所有権移転登記がなされているし、取引先であることから原告も知っている三菱銀行東中野支店の支店長の懸念表明もあって、原告からの被告JCF宛の明渡承諾書(乙三号証の一)を徴しているものの、本件不動産に原告が占有したままでの所有権移転であることを承知しているなどの事情によれば、被告A&Jが被告JCFに対する所有権移転が譲渡担保であることを知っていた疑いが濃厚であることは否定できないが、被告A&Jの悪意を認定する証拠は存在しない。とすると被告A&Jは原告が被告JCFに設定した譲渡担保権の拘束を受けず、石森証言によれば原告主張のとおり本訴の係属中である昭和六三年一一月頃に原告は本件不動産の所有権を確定的に取得したと認められ、原告は被告A&Jに対して本件不動産の返還を求めることはできない。

2  留置権の存在

原告の追求権が被告A&Jに及ばないとすると、被告A&Jの原告に対する明渡請求は認容さるべきことになるが、原告が被告JCFに対して譲渡担保権実行による清算金請求権を有し、この清算金は本件不動産に関する債権であることは疑いを容れないから、原告は清算金債権につき留置権を有する。被告A&Jは、原告は乙三号証の一(念書)により無条件明渡を約したのであるから、信義則又は禁反言の原則から留置権を主張して明渡を拒むことはできないと主張するが、右の念書は被告JCF宛となっていて被告A&Jに対する約束を記載したものではないし、右のとおり諸般の事情からすれば被告A&Jは原告からの被告JCFに対する本件不動産譲渡は譲渡担保によるものであったことを知り得る立場にあったことなどを勘案すると、留置権の主張が信義則等に反するものとは言えない。

3  清算金額

前認定のとおり原告の被告JCFに対する伊豆長岡の不動産処分後の残元本債務は三億五二五九万四六四八円であるが、これに昭和六二年一一月二五日(伊豆長岡の不動産処分の翌日)から被告A&Jが確定的に本件不動産の所有権を取得した日である昭和六三年一一月末日までの右残元本に対する損害金四二八九万九六六円を加算した三億九五四八万五六一四円が本件不動産処分時における原告の被告JCFに対する残債務であるが、これを本件不動産の右処分時における価額から差し引いた残額が清算金額である。本件不動産の右時点の価額については、甲九号証(鑑定書)記載の評価額も参考となるが、《証拠省略》(陳述書及び国土法による届出関係書類)により、中野区の指導価額六億二八五一万二〇〇〇円を超えるものということができない。とすると清算金額は二億三三〇二万六三八六円である。

(裁判官 高木新二郎)

〈以下省略〉

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